凪茨しか出てこないです。ラブラブしてます。
11月14日、23時頃。今年の俺の誕生日が終わろうとしている。今日は誕生日イベントだけで一日潰れた気がする。でも、まだ一つだけ重大イベントが残ってる
「茨」
声をかけられ、そちらを向く。閣下が少し困った顔でこちらを見ていた
「どうしましたか?」
「あのね、茨。私…」
言葉に詰まっている。閣下にしては珍しい。まあ人の誕生日を祝うなんて閣下もあんまりしたことないだろうから、なんて言えばいいのかわからないのかもしれない
「閣下」
「えっと、ね。茨、誕生日プレゼントなんだけど」
「はい!なんでしょう?閣下からいただけるなんて、勿体無い限りであります!」
わかっている。閣下からの誕生日プレゼントがまだだ。閣下のことだから、どうせ最後に渡したいとか思っているのだろう
「あのね、話を聞いて茨」
「アイ・アイ!聞いてますとも!いやー、何をいただけるのでしょう?」
「茨、だからね」
「勿体ぶらずいただきたい!今日が終わってしまいますから!」
「話を聞けって言ってるだろ。お前の耳は飾りか?」
「えっ…?」
突然『俺様』キャラの閣下が出てきて俺は固まった。いや、プレゼント貰えると思ってたんだけど。え?
「だから話を聞けって言ってんだろ。俺の話もまともに聞けないって言うのか?」
「あっ、はい。すみません…?」
いや、普通にプレゼント貰えると思ってたのに何これ。俺様閣下が始まると長いのだが?
「まずは黙って聞け。いいな?」
「はい」
「…うん、いい子だね」
大人しく正座をしたら元に戻った。思ったより早く終わったな?もしかして、プレゼント以外に何かあるのか?
「私、茨への誕生日プレゼントを買いに行ったんだけど、どれがいいかわからなくて…帰ってきちゃったんだ」
「は、はあ」
え?誕生日プレゼントを買おうとして出掛けたのに何も買わずに帰ってきたのかこの人?マジで?
「それでね、茨に何て言おうか考えてて…」
「なるほど。そういうことでしたか」
これはマジで買えなかった流れだ。いやでも去年の閣下のことを思えば、一人で外に出て買い物をしようとしてる時点で成長している。プレゼントを貰えないのは残念だが、ここは閣下のことを考えて…
「そしたら日和くんとジュンが来てね、今度は一緒にショッピングモールへ行って、どう選べばいいかアドバイスしてくれたんだ」
「それはそれは…え?」
あれ?もう一回プレゼント買いに行ったな?ということは…
「茨が喜んでくれるかわからないけど、これ。私からの誕生日プレゼント。改めて誕生日おめでとう、茨」
「ありがとうございます」
綺麗に包装された少し細長い箱を渡された。殿下達にアドバイスを貰ったらしいが、なんだ?
「開けていいよ」
「では僭越ながら」
閣下が今すぐ開けてと言わんばかりに見てくるので、ささっと包装紙を取る。出てきた黒い箱を開けると、そこには俺の髪色に近い紫色のネクタイが入っていた
「ネクタイ…ですか?」
「そう。日和くんが、いつも身近にあるものや身につけるものの方が自分を思い出してくれるって」
「殿下が言いそうですな。ありがとうございます」
なるほどな。まあ確かに俺は会議とかよく出るし、ネクタイは身につける。悪くない
「今、着けてみない?」
「せっかくですし、着けましょうか」
「私がやるよ」
閣下がネクタイを取って部屋着の俺のシャツの上からネクタイを締めている。閣下にネクタイを締めてもらえるなんて俺くらいだろうな
「どうかな?」
「素晴らしいであります!これで会議の成功
間違いなしですな!ははは!」
閣下が渡してきた手鏡で首もと辺りを見る。紫色のネクタイは綺麗に結ばれている
「よかった。これから毎日、私がネクタイを締めてあげるね」
「毎日使うかは怪しいですが…必要な時はお願いします」
「毎日してほしいな。そのネクタイを私と思ってしてほしい」
「考えておきます」
さすがに毎日閣下にネクタイを結ばれては敵わない。距離が近すぎて俺の心臓がもたない
「いつも茨の近くにいたいから。ダメ?」
「ネクタイではなくて、閣下ご本人がいてくれれば俺は十分ですよ」
なんて、キザな言葉だ。でも俺の本音。物よりも何よりも、閣下に近くに居てほしい
「茨。好きだよ」
「俺もです」
目が合って、キスをする。こんな最低野郎な俺を愛してくれる閣下は変わってる。でもそんな愛情に縋ってしまう俺もいる
「ねぇ茨。今日は一緒に寝たいな」
「そうですね。俺もそんな気分です」
幸い同室のメンバーは全員仕事で明日の昼過ぎまで帰ってこない。このまま閣下が泊まっても問題はない
「じゃあ寝る準備しようか」
「ええそうですね。枕を用意します」
俺は閣下泊まる時用の隠してある枕を取り出して俺の枕の横に置く。そして先程着けてもらったネクタイを外し、近くの机に置いた
「ふふっ、明日の朝ご飯は何がいいかな。私も作るの手伝うね」
「気が早いですな。まあ、そうですね…閣下の好きなものを作りましょう」
「嬉しい。茨の作るものはなんでも好きだけどね」
「ははは!勿体無いお言葉ですな!では、電気を消しますよ?」
二人でベッドに密着して入り、枕元の電気を消す。触れてるところから伝わる閣下の体温が暖かい
「では、おやすみなさい。閣下」
「うん。おやすみ。茨」
閣下は俺を抱き寄せて、幸せそうに眠った。一時はどうなるかと思ったが、無事に閣下から誕生日プレゼントを貰えてよかった。閣下の心臓の音を聞いて、側にいることに安心して俺も眠りについた